愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
帰社したら人事部の社員から新年度採用内定者の報告を聞き、空いている時間は稟議書に目を通して決済する。

午後も社内会議が一件と――。

「ん? これはなんだ。聞いていないぞ」

十四時半から、東日本LSIトータルデザインという会社の社長の訪問予定が入っていた。

田島が勝手にアポイントメントを受け付けたとは考えにくいが、朝陽が承認した覚えはない。

睨んでも不愛想な秘書の顔色は変わらず、淡々と答える。

「本社の藤江社長のご指示です」

つまり朝陽の父親が、息子のスケジュールに勝手な予定を組み込んだという。

「つい先ほど藤江社長から電話が入りました。専務に言えばわかると仰っていましたので、それ以上お話は伺っておりません」

「そうか……なるほど」

納得したが、舌打ちをつけてしまう。

東日本LSIトータルデザインは電子回路の設計会社で、始動中の新プロジェクトに関して仕事の一部を委託していた。

しかし重大な規約違反があったため、朝陽の指示で打ち切ったのだ。

信頼できない会社には、二度と仕事を依頼しない。

月に一千万近い利益を失うと焦った先方は、朝陽の父に泣きついたようだ。

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