愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
兄は父とよく似た冷血漢で、独身のひとり暮らしだ。

子供の頃から成績優秀で国内最高峰の理系大学を卒業し、いつも朝陽の二歩も三歩も先を歩んでいた。

(焦るな。まだ時間はある。もっと業績を上げて、経営手腕が兄貴より優れていることを示せばいい。アカフジ電機は俺が継ぐ)

「十四時半だな。わかった」

アポイントメントの時間までに心が冷えればいいが、今は怒りと野望が燃えており、容赦ない厳しい言い方で相手を切り捨ててしまいそうだ。

鼻の付け根に皺を寄せたら、ふと妻の顔が浮かんだ。

対戦型格闘ゲームで朝陽に簡単にノックアウトされ、リスのように頬を膨らませて悔しがっている顔だ。

生まれて初めてのテレビゲームが相当楽しかったらしく、あれから何度か妻にせがまれて一緒にゲームをした。

技を使いこなそうとコントローラーの操作手順を紙に書いて覚えようとしており、何事にも真面目な妻が可愛くも面白い。

テレビ前に正座して前のめりにプレイする真剣な横顔を思い出し、朝陽は思わず吹き出した。

「専務……?」

無表情な田島が目を見開いて驚いている。

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