愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
片手で口元を押さえても笑いを鎮められず、朝陽は肩を揺らしながら手振りで退室していいと示した。

微かに首を傾げて田島が出ていくと、しいたけに目を輝かせていた今朝の妻の様子も思い出して笑い声を大きくした。

(なんであんなに可愛いんだ)

ひとしきり笑った後は怒りも気負いも引いて、肩が軽くなる。

会社経営の重圧と常に力量を試される厳しい世界を生きている朝陽にとって、成美と過ごす時間がかけがえのない癒しとなっていた。



時刻は十四時半。

先に来客を五階の応接室で待たせておくよう田島に指示し、朝陽は約束の時間ちょうどに事業部の四十代男性部長を伴ってドアを開けた。

関係を切りたい相手に一分たりとも時間の無駄遣いをしたくなかった。

応接室は広く、十二人が囲めるソファセットが置いてある。

入口に近い下座を選んで座っていた三人が、すぐさま立ち上がって朝陽に深々とお辞儀した。

東日本LSIトータルデザインの木崎社長とは、プロジェクト始動前に一度だけ会って挨拶した。

中肉中背でやや頭髪の薄い五十代の男性だ。

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