愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
あとのふたりとは面識はないが、委託した業務を実際に行っていた社員が説明係として連れてこられたのだろう。

名刺を差し出す気にはなれない。

木崎社長がうやうやしく挨拶をする。

「お忙しい中、お時間を取っていただき誠にありがとうございます」

「そうですね。お互いに忙しい身なので、手短に終わらせましょう」

朝のスケジュール確認後に妻を思い出して笑ったため、怒りのボルテージは半減している。

それでも粘られると面倒なので、早く諦めてくれるように棘のある返しをした。

足早に窓側を背にした四人掛けソファに腰を下ろし、隣のソファに事業部の部長が座る。

田島がコーヒーと茶菓子を全員の前に配り、ホッとするような香りが広がったが、空気は冷ややかに張りつめていた。

「どうぞおかけください」

朝陽がソファを勧めても、相手方三人は姿勢を正して立ったままだ。

「まずは謝罪をさせていただきたいと思います。この度の弊社の規約違反により、御社には多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした」

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