愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
新プロジェクトは観測用人工衛星に関するもので、依頼していたのはAIを使った解析システムの部分的な設計だ。

仕事を請け負った際の相手方の見通しが甘かったのか、納期までに完成させるのが難しいと途中でわかり、こちらに内緒で他社にプログラミングの一部を委託した。

これは許されない守秘義務違反で、発覚したのは先々週だ。

腰を直角に折り曲げた三人に、朝陽は射るような視線を向ける。

「謝罪は事業部の者が受けています。一度で結構です」

違約金も振り込まれたのに、木崎社長が白い封筒と高級シャンパンの入った箱をテーブルに置いた。

封筒は大きさと厚みから、三百万円ほどの札束と思われる。

年間億単位の利益と比べれば、取るに足らない金額だ。

「深く反省しております。本日は改善案を作成してまいりました。ぜひお目通しいただきたく思います」

木崎社長がおずおずと歩み寄り、朝陽と事業部の部長に一部ずつ資料を手渡す。

(三十二ページもある。これを読めと言うのか。俺の時間をなんだと思っているんだ)

ページ数を確認しただけで資料をテーブルに置いた。

「おかけください」

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