愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
強めに促すと、木崎社長たち三人はやっとソファに腰を下ろした。

「弊社の社員から、資料に沿って改善案のご説明をさせていただきたいのですが――」

「結構です。改善案もそちらの封筒もお持ち帰りください。厳しいようですが、なにをされても壊れた信頼関係は元に戻りません。二度と仕事を依頼しないと決めています。すべてを最終的に決済するのは私ですので、本社社長にかけあっても無意味であるとご承知おきください」

関係終了をはっきりと告げ、幕引きしたつもりでいた。

「私はこれで失礼します」

後の対応を事業部の部長に任せて席を立つと、木崎社長が焦り顔で引き留めた。

「お待ちください。藤江専務はこの者の顔を覚えておりませんか?」

社長のふたつ隣の席に座っていた男性が、やっと出番だとばかりに立ち上がって笑みを浮かべた。

背は高くなく、やや太めの体形に濃紺のスーツを着ている。

短い黒髪のビジネスヘアで、狐目に黒縁眼鏡をかけていた。

(どこかで見たような……?)

「お久しぶりです。鹿内佑大です」

名乗られてやっと気づく。

同じ大学の同期生で、よく一緒に遊んでいた友人だ。

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