愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「佑大か。懐かしいな」

記憶にある彼は細身で、眼鏡ではなくコンタクトレンズを使っていた。

明るく短い茶髪にパーマをかけ、服装にこだわるお洒落好きな男だった。

謝罪目的の面会だからか随分と大人しい装いで、あの頃とは別人のようだ。

夜通し飲んで騒いだゼミのコンパや、めまいがしそうなほど大量のレポート提出を冗談を言い合いながら乗り切った楽しい思い出が蘇る。

思わず歩み寄り、笑顔で握手を求めた。

「すぐに気づかず、すまなかった。雰囲気がかなり変わったな」

「七年ほどのアメリカ暮らしで太ったんだ。ピザにしてもホットドッグにしても、向こうはなんでもサイズがでかいから」

あの頃に戻ったような口調で言われて思い出した。

佑大はややナルシストな傾向があり、学生の身で金もないのに無理してハイブランド品ばかりを身につけていた。

狭い日本では俺の力を生かせないと言って、就職先もアメリカの企業を選んだはずだ。

「いつ日本に帰ってきたんだ?」

「半年前。柄にもなくホームシックになってね」

性格の明るい彼にホームシックという言葉は似合わない。

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