愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
成美のために今夜も別々に寝るつもりなのか、朝陽が寝室から出ていこうとする。

(違うの!)

慌てた成美はその背に抱きつくようにして引き留めた。

「無理しなくていいんだよ。まずは君からの信頼を得られるよう、俺が努力しなければ」

「もうとっくに信頼しています」

出会ってからの時間は関係ない。

朝陽はいつも成美に配慮して、無理のないようリードしてくれた。

大人の香りがする新しい世界を教えてくれて、真面目すぎると言われがちな性格を好きだと言ってくれた。

抱えている家族の問題を解決してくれたのも彼だ。

大きく膨らんだ信頼を改めて感じたら、心の奥がきゅっと締めつけられるように苦しくなった。

それは切なく甘い感覚で、成美は胸に手をあて初めての感情と向き合う。

(これが恋なんだ……)


* * *


ここは都内にある掃除用品の販売やリース、掃除代行を事業とする会社だ。

全国展開している会社の規模は大きいが、成美の勤務先の店舗は小さく、古びた雑居ビルの一階に他社のテナントふたつと間口を並べていた。

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