愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
父からの評価を気にして身構えてしまうのだ。

緊張しながらコール音を十回聞いたが、留守番電話に切り替わった。

メッセージは残さずに切り、止めていた息を吐いた。

出てくれなかったことにホッとしていた。

それならばと次に電話をかけた相手は兄だ。

神童と呼ばれた兄にはいつも見下すような目で見られた。

朝陽も成績は常に上位であったが、兄からすると馬鹿な弟に見えたのだろう。

遊んでもらった記憶はなく、弟に関心もないので喧嘩にもならなかった。

しかし怖いと感じない分、父に比べればまだ話しやすい。

六回コールで電話に出た兄は、開口一番『用件は?』と聞いた。

「母さんについて。日に日に俺への執着が強まっている。今日は見合い写真を見せられた。そのせいで妻にも迷惑が及んでいる」

『俺にどうすれと?』

「もっと顔を見せに実家に帰ってくれ。母さんは寂しいんだ」

『お前が帰る回数を増やせばいい』

「俺ひとりに押しつけるなよ!」

つい声を大きくしてしまい、隣の寝室を気にしてすぐに落とした。

「兄貴だって息子だろ。母さんを放置するな」

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