愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
無自覚な妻は夫を救う
四月上旬の土曜日、街路樹の桜は花を散らし、緑の葉を風にそよがせている。

夫から初めてプレゼントされたイヤリングを耳につけ、いつもより少しばかりお洒落した成美は梢とカフェでランチをする約束をしていた。

待ち合わせは十二時で、落ち着いた雰囲気の商業地区まで夫に車で送ってもらう。

店の前の路肩に停車した彼に助手席からお礼を言う。

「ありがとうございます。行ってきます」

「ゆっくり楽しんで。帰りは迎えに来るから連絡して」

「そんな。電車で帰りますから朝陽さんは家でゆっくりしてください」

「駄目。なにかあったらどうするんだ。ひとりの体じゃないんだよ。絶対に連絡してくれ」

(朝陽さん、この子が生まれたら過保護なお父さんになりそう)

成美は朝陽の子を身籠り、四か月になる。

妊娠がわかったのは一月の下旬で、生理がこないのでもしかしたらと思い、その可能性を帰宅した朝陽に相談した。

すると翌日、すべてのスケジュールをキャンセルし仕事を無理やり休んだ夫に産婦人科に連れていかれた。

ひとりで行けるのに、同行すると言って聞いてくれなかったのだ。

診察室で妊娠していると医師から告げられた時、成美も嬉しかったが朝陽がそれ以上に大喜びしていた。

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