愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
不服ではあるが頷かないと車から降ろしてもらえないので、帰りに迎えを頼む連絡を入れると約束した。

車から降りてカフェの入口を目指す。

二階建てで赤煉瓦の外壁の温かみのある外観だ。

通りに面してテラス席があり、若いカップルがひと組だけ食事をしていた。

よく晴れているが風が少々強いので、中で飲食した方がいいかもしれない。

視線を感じて振り返ると、朝陽の車はまだ動かずそこにあった。

運転席から店内で食事するようにと身振りで指示をしている。

(私、しっかりしていないように見えるのかな。そのくらい判断できるのに)

ほんの少し芽生えた反発心からテラス席に座ってみようかと考えたが、お腹に手をあてて思い直す。

(朝陽さんの心配は、無事に生まれてきてほしいという気持ちからのもの。それは私も同じ。今はこの子のために絶対に無理をしない)

笑顔で頷くとやっと朝陽は車を発進させ、成美は店内に入った。

店内はふたり掛けと四人掛けのテーブルが十個ほどあり、カウンター席もある。

明るい木目のテーブルと椅子で、シンプルな白い壁には現代アートの絵画が複数飾られている。

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