愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
カラフルな野菜がはみ出すほど挟まれ華やかで、苺とマスカットのフルーツサンドは断面が芸術的に美しい。

「映えるよね」

梢がサンドイッチの写真を撮り始める。

SNSに載せるそうだ。

成美もつられて写したが、帰ってから朝陽に見せるためである。

サンドイッチを食べながら辞めた職場の話を聞く。

「成美のありがたみをひしひし感じてる。新しく入った事務の子、ミスが多くて。ただでさえ私の業務量が増えて大変なのに、フォローまでしなくちゃならないんだ」

「私が急に辞めたばっかりに、ご迷惑をおかけしてすみません」

「あー、そういうのなしで。愚痴を聞いてもらいたかっただけだから。成美は辞め時だったでしょ。ねぇ、妊娠ってどんな感じ?」

梢の視線が成美のお腹に向く。

元々痩せ気味なこともあって、妊娠四か月に入ってもお腹は少しも目立たない。

マタニティ用の服は揃えてあるがまだ出番はなく、今日はだいぶ前に朝陽に買ってもらったラベンダー色のシフォンワンピースを着ている。

見た目には妊婦だとわからなくても、成美はすでにしっかりと母親の心境だ。

お腹を撫でて大切な我が子に毎日、話しかけている。

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