愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
驚く皆の反応を見て、お見合いした時には自分も『そんなすごい人がなぜ?』と同じ反応だったと思い出した。

しかしどんな肩書でも朝陽は朝陽だ。

結婚式から七か月ほど経った今は夫に緊張しなくなり、一緒に過ごすのが当たり前に感じられるようになって、いつの間にか肩書に気圧されることはなくなっていた。

『まったく羨ましいわね』と言った梢だが、以前のように自分もハイスぺ男子と出会いたいとは言わなかった。

なんとなく雰囲気も柔らかくなったような気がして梢を観察すると、左手の薬指に目が留まった。

「梢さん、その指輪はもしかして?」

ベーグルサンドを皿に置いた彼女が、胸を張って指輪を見せつける。

「気づいた? そうだよ。婚約指輪。一度別れた彼にプロポーズされたんだ」

昨年の秋頃、交際相手に他に好きな人ができてフラれたと憤っていたが、最近になってよりを戻したらしい。

別の女性と付き合ってみたが性格が合わず、梢の大切さに気づいたそうだ。

「私じゃないと駄目なんだって。成美の旦那さんみたいにいい男じゃないけど、そこまで言われたら仕方ない。結婚してあげようと思ったんだ」

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