愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
渋々プロポーズを受けたような言い方だが嬉しそうな顔をしている。

梢にとっても恋人は唯一無二の存在なのだろう。

「おめでとうございます。私もすごく嬉しいです。お幸せになってください」

「うん、ありがと。結婚式には来てね」

「もちろんです。あっ、私の時にはご招待せずすみませんでした」

「ハワイでふたりきりで挙式したんでしょ? そこに私だけ招待されても困るから。成美は気にしすぎ。でも結婚前より硬さが取れたよね。旦那さんにほぐされたの?」

「ええと……はい」

恥ずかしくなってフルーツサンドにかぶりつけば、梢に笑われる。

「久しぶりに成美と話せて楽しい。出産後は大変だろうけど、たまには私に付き合ってね。成美は大切な友達だから」

「梢さん……」

「ちょっと、なに泣いてんのよ。いじめてないよ?」

そんな風に言ってくれる友人は過去にいなかった。

『硬すぎる』『真面目すぎる』と言われ、みんな居心地悪そうに成美のそばを離れていくのだ。

「あの、敬称を取って〝梢〟と呼んでもいいですか?」

「今さらそれ聞くの? てか早く敬語をやめてほしいとずっと思っていたんだけど」

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