愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「ありがとうございま……あ、ありがとう。これからは敬語はやめます、あれ? やめるね」

急に切り替えるのが難しく、何度も言い間違えてしまう。

そのたびに梢は楽しそうに笑ってくれた。



数日が経ち、今日は平日。

週に一度の掃除代行を業者に頼んでいるので家中いつもきれいだ。

料理以外の家事は少なく午前中の一時間で終わらせると、成美は昼まで縫物をする。

コットン生地のパッチワークは赤ちゃん用ブランケットだ。

(もう少しで完成するから縫いあげてしまいたいけど、根を詰めては駄目よね。お昼だし休憩しよう)

朝陽は昼食つきの会議があると言っていたので、今頃仕出し弁当を食べているのだろう。

仕事中の夫がどんな顔をしているのか成美は知らない。

(朝陽さんなら決して怒らず、優しい言葉で社員を励ましていそう。時々冗談を言って社員を笑わせているのかも。優しい朝陽さんが上に立つ社内の雰囲気は和気あいあいとして、働きやすそうね)

妊婦の妻を過剰に心配している時を抜かせば、夫はいつも朗らかで笑顔が多い。

しかし母親について悩んでいるのを成美は知っていた。

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