愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
夫の母から成美に電話がかかってきたのは三か月ほど前で、まだ妊娠に気づいていない時だった。

固定電話は朝陽が着信拒否に設定したため、あれからかかわっていない。

朝陽は時々実家に呼び出されているようだが、妻に心配をかけたくないのか、聞いてもはぐらかされて母親の話をしてくれなかった。

『気にしなくていい』『関わらなくていい』と言われ続けているのだが、嫁として認めてもらいたい思いを消せずにいる。

夫の母と電話で話した日の夜、彼は寝る前に自室にスマホを持っていった。

秘書に連絡すると言っていたが、怒っているような声が壁越しに聞こえたので、会話の相手は誰だったのだろうと思っていた。

(もしかしてお兄さんの梓馬さんかな。お母様と私の板挟みになっていることを相談していたのかも。朝陽さんを悩ませて申し訳ない……)

このままなにもしないでいては、生まれた子供も藤江家の孫だと認めてもらえないかもしれない。

そうなると子供が可哀想で、夫の気苦労も増えるのではないだろうか。

成美は広いダイニングテーブルでひとり、親子丼と和風サラダの昼食を取りながら、夫の母との関係改善に向けて頭を悩ませる。

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