愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
しかし食べ終えても妙案は思いつかない。
代わりに気づいたのは、話し合いもせずに考えているばかりでは、解決の糸口さえ見つけられないという事実だ。
食べ終えた食器を急いで洗い、出かける支度をする。
これから夫の実家を訪ねるつもりだ。
止められるのがわかっているので朝陽には事後報告することにし、夫の母に電話してお伺いも立てない。
(きっと会ってもいいとは言ってくださらない。押しかけて申し訳ないけれど、話さなければなにも変えられないもの。留守なら出直そう)
上品なデザインのスカートとブラウス、薄手のカーディガンに着替え、ハンドバッグを手に自宅を出た。
夫の言いつけを守り、個人タクシーを呼んでマンション前から乗り込む。
「奥様、毎度ありがとうございます。今日もご受診ですか?」
「いいえ、今日は主人の実家にお願いします」
「藤江様のお屋敷に……かしこまりました」
五十代の運転手の男性には妊婦検診で産婦人科へ通う際にもお世話になっている。
いつもは退屈しないよう話題を振ってくれるのだが、今日は成美からピリピリした緊張感が漂っているのか無口だった。
代わりに気づいたのは、話し合いもせずに考えているばかりでは、解決の糸口さえ見つけられないという事実だ。
食べ終えた食器を急いで洗い、出かける支度をする。
これから夫の実家を訪ねるつもりだ。
止められるのがわかっているので朝陽には事後報告することにし、夫の母に電話してお伺いも立てない。
(きっと会ってもいいとは言ってくださらない。押しかけて申し訳ないけれど、話さなければなにも変えられないもの。留守なら出直そう)
上品なデザインのスカートとブラウス、薄手のカーディガンに着替え、ハンドバッグを手に自宅を出た。
夫の言いつけを守り、個人タクシーを呼んでマンション前から乗り込む。
「奥様、毎度ありがとうございます。今日もご受診ですか?」
「いいえ、今日は主人の実家にお願いします」
「藤江様のお屋敷に……かしこまりました」
五十代の運転手の男性には妊婦検診で産婦人科へ通う際にもお世話になっている。
いつもは退屈しないよう話題を振ってくれるのだが、今日は成美からピリピリした緊張感が漂っているのか無口だった。