愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
気に入られるチャンスだと思ったのではなく、純粋な気持ちで協力を申し出ている。

「認めてくださらなくても一緒に探します。それがないとお母様は困るんですよね?」

夫の母は真剣な成美の顔を見て黙り込み、プイと顔を背けた。

「お節介なのね」

独り言のように呟いて、なくし物について話す。

それはエメラルドのペンダントトップがついたプラチナチェーンのネックレスなのだそう。

デザインは古いが気に入っており、よく身につけているらしい。

今日は華道のお稽古の日でそのネックレスをつけていこうとしたが、いつもしまっている引き出しになかったという。

お稽古どころではなくなり、朝からずっと探しているそうだ。

「お庭でなくされた可能性が高いんですか?」

「どこでなくしたのかわからないわ。家政婦とふたりで家中を探しても見つからないから、庭かもしれないと思っただけよ。よく利用するタクシー会社や、駅と警察の遺失物センターにも問い合わせたけれど、届いていないそうよ」

「最後に身に着けたのはいつですか?」

「それを覚えていれば、こんなに広範囲を探さないわよ」

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