愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
近所の買い物や散歩に行く時もつけるし、どこにも行かない日もなんとなく引き出しから出して首に提げることがあるという。

使用頻度が高すぎて、覚えていないらしい。

(協力するにしてもどこを探せばいいのかわからない)

成美が眉尻を下げるのと同時に、夫の母がハッとした顔をした。

「一昨日、お友達と歌舞伎を観にいったの。その時につけていたのは確かだわ。『ジュエリーをたくさん持っているのにまたそのネックレスなの?』と笑われたのよ。帰宅して外したかどうか覚えていない。チェーンの留め具が壊れて、歌舞伎座で落としたのかしら」

演劇場に電話をかけると言って夫の母は駆け出し、玄関から家の中に消えた。

必死な様子なので、そのネックレスをいかに大切にしていたのかが窺えた。

(大切な思い出があるのかも)

成美は朝陽からプレゼントされたアクセサリーの数々を思い浮かべた。

どれも大切にしているが、婚約指輪よりも思い出深いのは最初に贈られたダイヤと真珠のイヤリングだ。

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