愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
初めてのデートで敷居の高いフランス料理の店に連れていかれ、ドレスコードを気にして入店をためらっていたら、デートの締めに贈る予定だったイヤリングを先にくれた。

高価なジュエリーをつけると着ていた普通のワンピースがランクアップして見え、成美は心を楽にして美味しい食事を楽しめたのだ。

イヤリングをつければその時の夫の優しさを思い出し、ときめきや喜びも蘇った。

(あれがなくなったら私も必死に探す。お母様の思い出がどのようなものかわからないけど、絶対に見つかってほしい)

引き戸が開けっ放しにされているので、成美は「お邪魔します」と小声をかけて恐る恐る玄関内に入らせてもらう。

和風の外観とは違い中は洋風で、玄関の先は半円の小さなホールになっていた。

古い床板は艶やかに磨かれ、新しいものには出せない味わい深い光沢を放っている。

(素敵な玄関。お母様の趣味がいいのね)

たたきで待ちながら、演劇場で落とし物として保管されているのを願ったが、戻ってきた夫の母は肩を落としていた。

成美が玄関に立ち入ったのを怒る気にもなれないようで、上がり框で深いため息をつく。

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