愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「よろしければ、こちらをお召し上がりください」

「和菓子? 美味しい店をたくさん知っているからいらないわ」

「そ、そうですか。お好みに合わせられず、すみません」

押しつけは迷惑かと思い、持ち帰ろうとしたら、上がり框に現れたエプロン姿の中年女性がサッと手を伸ばして受け取ってくれた。

「朝陽さんの奥様ですね? 初めまして、家政婦の田中と申します。ちょうどお茶菓子を切らしていたので、こちらありがたくいただきます」

「田中さん、余計なことをしないでちょうだい。それにこの子は息子の妻じゃないわ。結婚を許していませんから」

「まぁまぁ奥様、そう怒らずに。お話が聞こえたんですけど、ネックレスを一緒に探してくださるとは、ありがたいじゃありませんか」

「どうせ見つかりませんよ。口だけで、本気で探す気もないでしょうし」

フンと鼻を鳴らされ、そっぽを向かれた。

「そんな……!」

成美が首を横に振ると、夫の母が急に弱々しい声になる。

「いいのよ、もう。諦めたわ。いえ……もうとっくの昔に諦めているのよ」

(とっくの昔?)

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