愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
嬉しくて成美の目にも涙がにじんだが、朝陽に気まずそうな声で耳打ちされる。

「帰ろう」

「あっ、はい」

息子として成美以上に喜びホッとしているはずだが、目の前で両親の抱擁を見続けるのは厳しいようだ。

そっとリビングから出たふたりは家政婦だけに見送られ、朝陽の車で実家を後にする。

国道に入ってから、成美は喜びの感情をあふれさせた。

「お父様とお母様、まるで映画のように素敵でした。夫婦の歴史を垣間見せてもらった気分で、貴重な体験をさせてもらいました。何十年後かの私たちも、朝陽さんのご両親のようになれるでしょうか?」

フフッと照れ笑いしながら隣に問いかけると、運転席から横目で睨まれた。

「俺に家に帰ってきてほしくないの?」

「違います! 年をとっても、愛していると言い合える夫婦になりたいという意味です」

自宅まではしばらく直進のはずなのに、朝陽がウインカーを出して市道へ左折した。

通行の妨げにならない場所を見つけて路肩に停車すると、助手席に身を乗り出して成美の唇を奪う。

(突然こんなところで……!?)

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