愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
真面目な娘
夏が過ぎて秋も深まり、高層ビルが建ち並んだ街に木枯らしが吹き抜ける。

ここは総合病院の特別室で、病衣を着た成美は点滴を受けながらベッドに横になっていた。

傍らに付き添うのはスーツ姿の朝陽で、三十分ほど前に仕事を切り上げて駆けつけてくれた。

ベッドサイドに椅子を寄せて腰かけ、血色の悪い妻の顔を心配そうに見つめる。

「体調が悪い中での睡眠不足に栄養不良。倒れて当然だと医師に言われた。三日間の入院だそうだ。育児を頑張りすぎたんだよ」

二か月ほど前の九月下旬に、成美は女児を出産した。

名前は清香(きよか)。

清らかな女性に育ってほしいと夫婦で考えた名だ。

清香は三千六百グラムの大きめの赤ちゃんで、骨盤がやや狭い成美の出産は難産を極めた。

陣痛に丸二日、分娩台に上がってから三時間苦しみ、胎児の心拍数が下がってきたので緊急帝王切開で出産した。

分娩台まで立ち会っていた朝陽は、彼らしくなく狼狽していた。

妻が亡くなってしまうのではと焦ってもなにもできず、無力感にさいなまれて落ち込んでもいた。

けれども生まれた我が子と対面したら喜びが勝り、初めての抱っこに感激して涙を流しながら成美に何度もお礼を言ってくれた。

成美も小さな手にぎゅっと指先を握られたら嬉しくて胸が震え、難産の苦しみはすっかり頭の隅に追いやられたのだ。

しかし産後の体が相当なダメージを負っているのに変わりはない。

その状態で不眠不休の育児に突入し、夫に心配されても元気なふりをした。

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