愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
店舗内は業務机が六つと客対応用のカウンター、応接用のソファセットがあって、バックヤードに商品の在庫や掃除機器を詰め込んだ倉庫と更衣室がある。

スペースに対して物が多くて狭いけれど、掃除会社なだけあって隅々まで掃除が行き届いた気持ちのいい店舗だ。

時刻は十五時。

肩下までのストレートの黒髪をひとつに結わえた成美は、紺色チェックのベストに膝下丈タイトスカートという事務員の制服を着ていつものように自分の机に向かっている。

電話対応や発注、依頼を受けてからの掃除スタッフの手配、商品の発送や請求書の送付などが成美の業務だ。

「及川(おいかわ)さん、これもお願いします」

「はい、承りました。お疲れさまです」

掃除代行から戻った中年の男性従業員が、客のサイン済みの書類を成美の机に置いていく。

それに不備がないかを確認し、デスクトップのパソコンで請求書を作成していたら、隣の机との境にある電話が鳴った。

隣はもうひとりの事務員、春野梢(はるのこずえ)の席で、彼女が先に受話器を取ったので成美はパソコン画面に意識を戻した。

すると、電話中の梢に肩を叩かれる。

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