愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「ユニークな表現だと思っただけで怒っていません。ただ、弁解はさせてほしい。バタフライは泳げないからメドレーではない」

自分で言っておかしかったのかハハッと笑ってから、真面目な顔をする。

「それと、いつもは夜間に利用していて、あの日はたまたま早い時間に行ったんです。泳ぎ始めは夜間帯と同じくらい空いていて、それで周囲を気にせずスピードを出してしまった。他の利用者が泳げなくていいとは思っていないから、注意してくれてありがとう」

「それを私に言うために、お見合いを?」

彼のスーツの内ポケットから携帯電話のバイブ音が響いているが、今度は無視していた。

休日まで仕事に忙しそうなのに、弁解をするためにわざわざ再会までの道筋を作ったのかと不思議に思う。

(ひどい人だと思われたままなのが嫌だった、ということ? 私なら、今後関わりがなさそうな人にそこまでしない。誤解を解くのはあきらめる。藤江さんはどうして……)

疑問が顔に表れていたのか、聞かずとも答えてくれる。

「成美さんに誤解されたままなのはつらい。なぜなら俺は、前から君が好きだから」

「えっ……?」

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