愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
急に砕けた口調で口説いてくるから、成美の鼓動が大きく跳ねた。

右手を取られて軽く握られ、大人の色気を感じる視線を向けられた。

真っ赤な顔で動悸に耐えながらも、必死に記憶を探っていた。

(スポーツジムの前にも会っているの? いつ、どこで?)

朝陽ほど見目好い男性なら記憶に残りそうなものなのに、少しも思い出せないのが申し訳なく感じた。

「すみません、スポーツジムの時が初対面だと思っていました。どこでお会いしたのでしょう?」

「いや、会っていない。俺が一方的に知っていただけなんだ」

甘口の端整な顔を三十センチまで近づけた彼が、いたずらめかした口調で囁く。

「どういうことか知りたい?」

近すぎる距離に苦しいほど鼓動は高鳴るが、逃げずにお願いする。

「教えてください。このままでは気になって眠れません」

「それはいいな。ベッドで一晩中、俺について考えてくれるとは光栄だ」

「間取りが狭いので、ベッドではなく布団で寝ています」

間違いを訂正しただけなのに、吹き出されて面食らう。

「思った通り、成美さんはあの時のまま成長してくれたんだな。そのまっすぐな真面目さが可愛い」

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