愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
出会って三度目でのプロポーズ
終業時間の十八時。

急いで仕事を終らせた成美は、タイムカードを押して女子更衣室のドアを開けた。

四畳半の狭い部屋にはネームプレートのついた縦長のロッカーが三つある。

事務員用の制服を脱いで真ん中のロッカーにしまい、扉を閉めようとしたが、その手を止めて内側についている小さな鏡に顔を映した。

メイクポーチを出して頬に薄くチークを刷き、唇にピンクのリップを塗った。

安物の化粧品しか買えないが、このリップは発色がよくて気に入っている。

(これが精一杯のメイク。おかしくないかな)

身なりを確認し、ロッカーを閉めて店舗フロアに戻ったら、梢が入れ替わりに更衣室に入ろうとしていた。

「私も終わった。一緒に駅まで帰ろ。着替えるから待っていて」

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