愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「嫌じゃないですよ。どんな人でも、話せば必ずわかってくれますから」
それは警察官だった父の言葉だ。
煙草の吸い殻のポイ捨てや自転車のふたり乗りなど、社会のルールを無視する者を見かけたら、たとえ家族でお出かけ中であっても父は必ず注意しにいった。
『どんな人でも話せば必ずわかってくれる』というのが持論で、敬愛する父の言葉は皆が嫌がる苦情対応でも生かされてきた。
成美は笑みを作って電話の保留を解除する。
「お待たせいたしました。ここからは私、及川がお話を伺います。弊社のモップ用クリーナーをお使いいただき誠にありがとうございます。クリーナーに欠陥があるという――」
成美の言葉を遮るように、受話器から怒声が響く。
声質から高齢男性であるとわかったが、梢が言った通り、相手はかなりの怒りの中にいて会話にならない。
『ちっともごみを吸わねぇ。こんな不良品をリース契約させてけしからん会社だ!』
大声で繰り返される苦情にひたすら相槌を打ち続けること十五分ほどして、ようやく相手の勢いが弱まった。
おそらく怒鳴るのに疲れたのだろう。
ここがチャンスと思い、成美は優しく問いかける。
それは警察官だった父の言葉だ。
煙草の吸い殻のポイ捨てや自転車のふたり乗りなど、社会のルールを無視する者を見かけたら、たとえ家族でお出かけ中であっても父は必ず注意しにいった。
『どんな人でも話せば必ずわかってくれる』というのが持論で、敬愛する父の言葉は皆が嫌がる苦情対応でも生かされてきた。
成美は笑みを作って電話の保留を解除する。
「お待たせいたしました。ここからは私、及川がお話を伺います。弊社のモップ用クリーナーをお使いいただき誠にありがとうございます。クリーナーに欠陥があるという――」
成美の言葉を遮るように、受話器から怒声が響く。
声質から高齢男性であるとわかったが、梢が言った通り、相手はかなりの怒りの中にいて会話にならない。
『ちっともごみを吸わねぇ。こんな不良品をリース契約させてけしからん会社だ!』
大声で繰り返される苦情にひたすら相槌を打ち続けること十五分ほどして、ようやく相手の勢いが弱まった。
おそらく怒鳴るのに疲れたのだろう。
ここがチャンスと思い、成美は優しく問いかける。