愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
勢いよく成美の肩を掴み、目を輝かせて顔を近づけてくる。

「ついに彼氏ができたんだ。おめでとう!」

「違いま――」

「成美を心配していたんだよ。真面目すぎて、このままだと恋もせずに女のいい時期が終わるんじゃないかって。これで私の彼氏の話も聞いてもらいやすいし、すごく嬉しい。それで、どんな人? 写真ある?」

店舗の営業時間は三十分ほど前に終わっているが、店長と社員数人がまだデスクに向かっている。

清掃作業を終えて戻ってきたばかりの従業員もいて、用具を片づけているところだ。

興奮した梢の声で皆の注目を浴びてしまい、恥ずかしさに成美が顔を熱くすれば、作業着姿の男性が駆け寄った。

「及川さん、この前、付き合っている人はいないと言っていましたよね?」

焦り顔でそう聞くのは高木という青年で、二か月前に派遣会社を通じて有期契約で雇用され、成美より三歳年上だ。

この前というのはたぶん先月の昼休みで、店長が差し入れてくれたピザを皆で食べている時に、雑談の流れでそのような会話をした覚えはあった。

「彼氏がいないというのは嘘だったんですか?」

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