愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
高圧洗浄機のノズルを片手に詰め寄ってくるので、動揺した成美は片足を引く。

「嘘じゃないですよ。今月の初旬にお見合いをしたんです。その方とこれからお食事するだけで、お付き合いは――」

「お見合い!? 彼氏じゃなく婚約者なの? 告白する前にフラれてしまったか……」

(えっ?)

肩を落とした高木に成美は目を瞬かせる。

これまで高木から積極的なアプローチを受けたことはなく、業務でも数えるほどしか言葉を交わしていない。

好意を持たれていたと初めて知って驚いたが、梢は高木などどうでもいいと言うように手で押しのけて成美の正面に立った。

「どうして教えてくれなかったのよ。今時お見合いなんて古風というか、成美らしい出会いの求め方で面白いわ」

(面白いの?)

「じっくり話を聞きたいけど、待ち合わせの時間に遅れたら大変。また今度にする」

そう言われたら、ショルダーバッグの中で成美の携帯電話がふるえた。

取り出さずとも、到着を知らせるメッセージが朝陽から送られてきたのだとわかった。

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