愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「本体の右側に赤ランプがついていませんか? ついていましたらクリーナー内にごみが溜まっているという合図ですので、蓋を開けて捨ててください」

『へ? 赤ランプ……ついてるな。どこを開けろって?』

そこからさらに十分ほどかけて丁寧に説明し、男性はクリーナー内のごみを無事に捨てることができた。

そうすると予想通り吸引力が回復して、埃が付着したモップはきれいになったという。

受話器から聞こえてくる声が別人のように弱々しくなる。

『ごみが溜まって吸わなかったんだな。当たり前の理由に気づかないで恥ずかしい。さっきは怒っちまってごめんな』

「いえ、お気になさらないでください。奥様がご入院されて大変ですね。弊社の商品の使用方法など、ご質問がありましたらいつでもお気軽にご連絡ください。奥様が早くお元気になられますよう、私も祈っております」

『ありがとう。あんた、いい子だな。あんたにもいいことがあるよう祈ってるよ』

受話器を戻したら拍手が沸き、成美は驚いて見回した。

店舗内には店長と四人の社員、ふたりのアルバイト従業員がいて、皆感心している。

「及川さんはクレーマーの対応がうまいな」
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