愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「いえ、宿泊はしません。プロポーズをお受けしましたが、そういうのは婚姻届けを提出して夫婦となってからにしてください。何事にも順序は大切です」

ときめきよりも筋を通したい、それが成美の性格だ。

急に真面目な目できっぱりと主張した成美に、彼が面食らった顔をした。

「硬すぎるところも好きだが、こういう時は――いや、なんでもない。それが君だ」

フッと笑った朝陽が成美の手を引き寄せて、その甲に唇をあてた。

「あっ」

たちまち赤面してオロオロする成美を、彼がクスリと笑う。

「今夜はこれで我慢しよう。ちゃんと送っていくから安心して」

(たったこれだけと言いたそうだけど、私には十分すぎる)

グラスの中の氷が解けてカランと音がした。

彼に導かれて踏み入れた大人の世界は刺激的だ。

成美は鼓動の高まりを耳元で聞きながら、キスされた手の甲を見つめていた。

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