愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
『どこの馬の骨かわからない卑しい娘を連れてこないで。結婚したいなら良家のお嬢さんとの縁談を用意したのに、どうして勝手な真似をするのよ。あなたまで私をないがしろにするの? 私の気に入らない娘との結婚は認めませんから』

成美がひと言発する前に追い払われては、わかり合えない。

『母さんは精神的に不安定なところがあって。誰を連れてきても認めないと思うから、気にしなくていい』

朝陽はそう言ってくれたけれど心は痛み、気にしないわけにいかなかった。

彼の父親には、母親とは違う衝撃を受けた。

天下のアカフジ電機の代表取締役社長を務める父親は多忙で、会えたのはアカフジ電機本社の社長室だった。

冷ややかな印象の切れ長の目に頬骨の張った顔立ちでがっしりと体格がよく、威厳がにじみ出ているような六十代の男性だ。

『初めまして、及川成美と申します。この度は――』

前もって考えてきた挨拶を緊張しながら口にしたら、それをすぐに遮られた。

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