愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
『息子から話は聞いている。よろしく。我が家は親戚付き合いがほとんどないんだ。年始の挨拶もいらない。妻がいい顔をしていないようだが、気にしなくていい。ふたりで仲よくやってくれ。朝陽、ついでに事業報告を聞こう』

息子の結婚相手に少しも関心がなさそうな態度に驚かされた。

朝陽が言うには父親は仕事人間で、昔から家庭を顧みない人らしい。

時間がもったいないからと社屋の近くのマンションで寝泊まりし、朝陽が子供の頃からほとんど家に帰ってこなかったそうだ。

そんな父親に性格の似ている四歳上の兄に至っては、電話でしか挨拶に応じてくれなかった。

『自己紹介はいい。弟からメールで知らされている。結婚祝いは秘書に送らせる。申し訳ないが俺は忙しい。結婚式や披露宴には出席できない。顔合わせはいつか、機会があれば。以上だ』

成美が彼の家族に感じたのは冷たさと無関心さで、優しく紳士的な朝陽と対照的に思えた。

それに戸惑うとともに、結婚を延期した方がいい気がした。

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