愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
朝陽は年内には婚姻届けを提出して一緒に暮らそうと言ってくれたが、彼の母親に結婚を許され、父や兄とももう少し交流してからの方がいいと思ったのだ。

それで結婚を来年以降にしないかと相談したら、両肩を掴まれて心配そうに顔を覗き込まれた。

『駄目だ。むしろ結婚を早めた方がよさそうだ』

『どうしてですか?』

『君の気が変わったら困る』

(反対されても結婚したいんだ。そこまで想ってくれるのは嬉しいけど、藤江さんとお母様の関係が悪くなったらどうしよう)

そのような経緯があり、ふたりだけでの海外挙式となった。

ハワイを選んだのは朝陽で、その理由はわからないが成美にとっては初めての海外だ。

昨日到着し、美しい南国のロケーションとチャペルを見た時には感動した。

できれば成美の母には参列してもらいたかったのだが、朝陽の両親を差し置いて自分だけ出席できないと断られてしまった。

娘と同じように生真面目な性格の母である。

(私の花嫁姿、お母さんに直接見てもらいたかった。バージンロードはお父さんと……)

行方不明の父を忘れた日はなく、いつかきっと帰ってきてくれると今でも信じていた。

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