悪役令嬢は推し神様に嫁ぎたい!〜婚約破棄?良いですよ?でも推しの神様に嫁ぐため聖女になるので冤罪だけは晴らさせて頂きます!〜
***

「今日仕入れたばかりの商品だ、見てってくれ!」
「どうだいお嬢さん、安くしとくよ!」

 客引きの声を笑顔で断りながら、街娘に扮したティアリーゼは慣れた様子で街を歩いていた。

(最後にお忍びの街歩きをしたのはかなり前だけれど、問題はなさそうね)

 お妃教育に明け暮れていたとはいえ、気晴らしもなく続けるのはいくらティアリーゼでも無理だ。
 たまにしか出来なかったが、お忍びで街に出ては人々の活気に元気をもらっていた。
 今は例の商人の店へ向かうところだが、久々に見る民の様子にまた元気をもらえているような気がする。

 ドレスは神殿長に頼み今着ている服と小金に変えてもらった。
 冤罪を晴らすため暗躍するにはドレスで動き回るのは目立ちすぎる。

 また、神官の衣も別の意味で目立つ。
 聖霊力が多い神官は時に人々の祈りの代理をすることもあるため、代わりに祈りを! と群がられてしまうのだ。
 だからお忍びと同じように街娘の姿で歩いていたのだが……。

「姉ちゃんべっぴんさんだなぁ。いい仕事があるんだ、ちょっと話を聞いてかねぇか?」
「え? いえ、私は……」

 一人で歩いていた所為だろうか。
 少し乱暴そうな男に絡まれてしまった。
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