悪役令嬢は推し神様に嫁ぎたい!〜婚約破棄?良いですよ?でも推しの神様に嫁ぐため聖女になるので冤罪だけは晴らさせて頂きます!〜
 思えばお忍びのときは誰かが近くにいた。
 あれは単純に護衛のためだけではなく、このように絡まれないためだったのだなと今更ながら理解する。

「ほら、こっちだ」

 やんわり断ろうとするが、強引な男はティアリーゼの手首を掴み人気のない方へと連れて行く。

(困ったわ。あまり大きな騒ぎは立てたくないのだけれど……)

 ティアリーゼには魔術と神術どちらも使える力がある。
 その力を使えば不届き者から逃れるのは簡単だ。
 だが、普通の街娘はそよ風を起こす程度の術しか使えないため目立ってしまうだろう。

「ピピピ!」
「わっ、なんだこの鳥?」

 ティアリーゼの危機と見たのか、ピューラが男に纏わりつくように飛ぶ。
 だが、男の太い腕に振り払われそうなのを見てティアリーゼの方が慌てた。
 こんな太い腕に当たったら、ピューラのような可愛い小鳥はひとたまりもない。

「ピューラ! 大丈夫よ、こっちにおいで」

 呼ぶと、「ピュー」と不満そうに鳴きながらピューラはティアリーゼの肩に止まる。

(大丈夫。人気のないところに行けば術を使っても目立たないわ)

 肩に止まったピューラのくちばしを指先で撫で小声で伝えると、頃合いを見て魔術を行使出来るように魔力を集中させた。
 だが――。
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