悪役令嬢は推し神様に嫁ぎたい!〜婚約破棄?良いですよ?でも推しの神様に嫁ぐため聖女になるので冤罪だけは晴らさせて頂きます!〜
 昔々、土の神の眷属・鉱石を司る神エルシュに惚れたモグラがいた。
 だが美しいものを好むエルシュはモグラを気にも留めない。
 思いを遂げたいモグラはイタズラ好きな光の神の眷属・悦楽(えつらく)の神フェアルデの力を借り美男の姿となってエルシュと一夜を共にする。
 朝になり正体が露見したモグラは怒り狂ったエルシュに土に埋められてしまう。

 それでも怒りが収まらないエルシュは、協力者のフェアルデにも復讐をする。
 特殊な毒の花から作った眠り続ける毒を与えたのだ。
 光の神がもうこのようないたずらをさせないからと説得し、エルシュは解毒薬を作りフェアルデを目覚めさせた。

 その神話に出てくる毒の名を《エルシュの復讐》と呼ぶ。
 ただ、人間の世界で扱われているのは効能だけを似せた偽物だが。

 眠り続けているという症状を聞いたときから検討はつけていたが、フロント氏の話を聞く限り毒は《エルシュの復讐》で間違いないだろう。
 本当は解毒薬があればいいのだが、《エルシュの復讐》もその解毒薬も希少なものだ。
 歴史を顧みると王城では幾度か使われている毒だが、一般に出回るようなものではない。
 未だにエリーが目覚めないところを見ても、豪商のフロント商会といえども解毒薬は手に入らなかったのだろう。
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