悪役令嬢は推し神様に嫁ぎたい!〜婚約破棄?良いですよ?でも推しの神様に嫁ぐため聖女になるので冤罪だけは晴らさせて頂きます!〜
 たった五歳の幼子が自分一柱(ひとり)だけに全ての聖霊力を送ってくれたのだ。
 一人だけとはいえ、その娘の聖霊力は多く純粋な力に溢れている。
 毎日捧げられる祈りのおかげで、ストラは神々の国を自由に動けるようになった。
 いくら表面上は公平であるべき神とはいえ、そのような娘を寵愛するなという方が無理なこと。
 立場故に神官にはなってもらえなかったが、この愛しい娘をずっと見守っていようと思っていた。

 だが、つい先日状況が一変する。
 見守っていた娘――ティアリーゼに死の危機が訪れたのだ。
 不条理な理由で一方的に湖に落とされる様子を見て、助けねばと思った。
 一人の人間にあまり干渉してはいけないと神々の間では決められている。
 だが、そんな決まり事など関係ないと迷うことなく体が動いていた。

 愛しい娘が、たった十七という若さで命の灯を消してしまう。
 許せることではない。

 ただ、そうして助けても今までのように自分に祈りを捧げてくれればいいと……それで十分だと思っていた。
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