悪役令嬢は推し神様に嫁ぎたい!〜婚約破棄?良いですよ?でも推しの神様に嫁ぐため聖女になるので冤罪だけは晴らさせて頂きます!〜
 人間に扮している以上神力を解放するつもりもないようなので、彼の言う通りエリー達には詳細を伝えないことにした。

「まあ、そうでしたか」

 詳しく話さなくとも彼女達は詮索してこない。
 神力を抑え平民の姿に扮していてもストラの洗練された美貌は隠せないため、おそらくどこかの貴族だとでも思っているのだろう。
 そのままティアリーゼは自分が神官になったこと、元々神官の適性の方が強かったこともあり自分ならエリーの治療も出来るかもしれないとフロント商会を訪れた理由を伝えた。

「そして何より、冤罪を晴らすためにエリーさんの証言が必要なのです。お願いします、公爵家の庇護が必要であれば父に願い出ておきますから」

 宰相でもある父はその大きな権力を使う場面は慎重に選ぶ。
 だが娘の冤罪を晴らすためだ。
 商会一つ擁護することくらい問題なくやってくれるだろう。

 証言をしてもうために出来ることはやるつもりだと伝えると、フロント氏はゆっくり重く頷いた。

「ティアリーゼ様、あなたは娘の命の恩人だ。庇護まで願い出てくれるというのなら助力を躊躇うことなどありません」
「そうです。むしろムバイエ子爵家とは縁を切りたいところですから!」

 真面目な表情のフロント氏の言葉に、エリーも力いっぱい同意してくれる。

「ありがとうございます」

 エリーを助けたとはいえ、ムバイエ子爵家を敵に回すことになるのだ。
 豪商とはいえ平民であるフロント氏には迷う要素もあるだろう。
 それでも自分に協力してくれたことにティアリーゼは素直に感謝した。
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