モノクロに君が咲く
「朝の言葉はなんだったんだよ!? 一日気にしてたおれの気苦労返せ、バカ!」
「ほんっと、うん、なんかよくわかんないけどごめん……」
だって、まさか先輩があんな方向で攻めてくるとは思わなかったのだ。
病気のことを知ってまで私のことを好きでいてくれて、あろうことか死ぬ未来がわかっていても共に居たいと──そんな危ういことを言われてしまったら、突き返すこともできなかった。当然だろう。私はユイ先輩が好きなのだから。
私がずるずるとその場にしゃがみこむと、愁が一瞬たじろいだ気配がした。
「……ちょ、大丈夫? また具合悪くなったとか言わないよね?」
「うん、そうじゃなくて。なんかいろいろ、いっぱいいっぱいで……」
はあ、とふたたび頭上で愁の嘆息が落ちた。
そりゃそうだ。愁が安心できるようにユイ先輩から離れようと決意したはずが、むしろ状況をややこしくしてしまっている。
しかも、わりと、取り返しのつかない方向へ。
呆れられるか、はたまた怒られるか。なんにせよ降り注ぐだろう罵倒を覚悟していると、愁はなぜか私の前に視線を合わせるようにしゃがみ込んできた。
「……あのさ。おれはべつに、姉ちゃんから自由を奪おうとは思ってないんだよ」
「っ、え?」
「高校に通うのも、入院しないのも、たしかに反対したけど。でも、それで姉ちゃんが幸せになれるならそっちの方がいいのかなって……最近は思ってる」
言いにくそうに言葉を濁らせる愁は、けれどもやっぱりつらそうで、まだどこか迷っているようにも見えた。
言葉にして告げることで、自らを説得しているような響きすら孕んでいる。