モノクロに君が咲く
「あなたを待ってたのよ。ここにいれば会えるかなって」
「へ、私ですか?」
思ってもみない返答に毒気を抜かれた。きょとんとしながら聞き返す。
「そうよ。昼間、あなたがいるのが見えたから」
「はあ……」
沙那先輩は、どうやらユイ先輩と親しくしている私が気に入らないらしく、一年生の頃からなにかと突っかかってくる人だった。
美術部員でもないし、私との接点なんてほぼ皆無。
なのに、なにかと絡まれるおかげで、変な親交の深め方をしてしまっている。とはいえ、こんなふうに待ちぶせされるほど仲良くなったつもりはないのだけれど。
「あなた、今日、新学期になってはじめて学校に来たのよね?」
「あ、えっと、まあ」
煮え切らない答えを返すと、沙那先輩は不愉快そうに腕を組んで眉根を寄せた。もともとツリ目がちなこともあり、それだけで威圧感が倍増しになる。
「一ヶ月も姿を見せないと思ったら、突然またやってきて凝りもせず結生のストーカー。いいご身分ね。何様だと思っているのかしら」
おーっと……?
これはもしや、ただ単に嫌味を言われるためだけに呼び出された口だろうか。
「ストーカーだなんて、やだなあ。そんなんじゃありませんよ」
「付き纏ってるじゃない」
「部活動に勤しんでいるだけです」
実際私は、あの屋上庭園以外でユイ先輩と会うことはほぼないのだ。
ユイ先輩は他人と最低限しか関わらないし、猫のように気まぐれな一面を持っているから、放課後以外はどこでなにをしているのか見当もつかない。
そりゃあ、他の人に比べれば相手をしてもらっている自覚はあるけれども。