モノクロに君が咲く



 鈴をベッドに寝かせていたら、タイミングがよいのか悪いのか、鈴の弟くんがお見舞いにやってきた。弟くんは、俺を見てあからさまにげんなりしたような顔をする。

「またいんのか、あんた」

「うん。でも、もう帰るよ。今、散歩から帰ってきたところ」

 さきほどのおかしな鈴の様子は気になったが、幸いにも体は少し疲れただけのようだった。

 ベッドに横になったおかげか、目がとろんとしている鈴を撫でながら言う。

「……あっ、そ。まあなんでもいいけど」

「じゃあまたね、鈴」

「はい。先輩、今日はありがとうございました」

「ゆっくり休んで」

 病室を後にした俺は、そのまま通い慣れた小児科の病棟を歩く。

 鈴は個室だが、全体的には大部屋が多い。

 比較的元気なように見える子もいれば、やはり具合がよくなさそうな子もいる。自分よりもずっと小さな子どもたちが闘病している姿を見るのはもちろん初めてで、そんな現実だけはどうも慣れる気がしなかった。

 けれど、不思議と、ここは笑顔が多いように思う。

 入院している子どもたちはよく笑う。笑っている。鈴と似た笑顔で。
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