モノクロに君が咲く
でも、やっぱり、先輩に──大好きな人に会いたくて仕方がなかった。
「答え合わせをしましょうか」
私がそう告げると、ユイ先輩は少しの間を置いて「そうだね」とつぶやいた。
「なにか見つかりました? 先輩にとっての私がどんなものか」
「……俺にとっての、鈴。そう聞かれると正直困る。わからないというよりは、上手く言語化できないんだ。でも、気づいたことはあったよ」
「気づいたこと?」
私は体を起こして、隣のユイ先輩を見上げる。
微かに寂しそうな色を灯しながらも、先輩は私を見つめ返して目線だけでうなずいた。
「俺の心には、もう鈴が棲んでるんだってこと」
「……私が棲んでる?」
「うん。そして鈴が、俺の世界を照らしてくれているんだってこと」
私の頭を包むように撫でながら、ユイ先輩は穏やかに続ける。
「離れてる間、すごく寂しかった。時間の流れが、いつもの何倍も遅く感じて。毎日毎日、会いたくて仕方がなかった。でも、これだけ離れていても、俺のなかにはいつも鈴がいたよ。はっきりと感じてた。いつも俺のことを支えてくれてたんだ」
ふわりと冬初めの風が吹く。ユイ先輩はさっと立ち上がり、いつになく素早い動きで着ていたブレザーを脱ぐと、そっと私の膝にかけてくれる。
「……俺ね、鈴。絵を描けるようになったよ」
「絵?」
「色づいた世界を、描けるようになった」
私は思わず目を見開いた。驚きすぎると咄嗟に声も出ないらしい。
モノクロ画家と名高い先輩が、色を描く。
灰色の世界しか見えていないと言っていたユイ先輩が、色を──。
「……先輩の世界が、色づいたってことですか?」
声が、心が、震えた。