モノクロに君が咲く
「はい。体の内側が現時点でどのくらい衰退しているのか、衰退速度はどの程度なのかを定期的に検査するんです。一日二日ではわからないので、一ヶ月ほどかけて行う必要があって。だから、学校を休んで入院していました」
新学期開始と被ってしまったのは、私的にも相当な痛手だった。
だが、こればっかりは致し方がない。
なにせもう五年目だ。私の体は、いつなにがあってもおかしくない状態にある。
「……結果は」
「え?」
「結果は、どうだったの。まだ……」
生きられるの、と声にならなかった言葉が聞こえた気がして、私はくすりと笑う。
案の定、どうして笑うのかと沙那先輩は今にも泣きそうな顔を歪めた。
──けれど、だって、ほら。
私相手にそんな顔をしてくれる沙那先輩は、やっぱり悪い人ではない。ただ不器用なだけで、わかりにくいだけで、誰かを思いやる心は人一倍持ち合わせている。
「とんとん、とまではいきませんが、幸いまだ加速はしてないみたいですね。でも五年ですから、さすがにいろいろと不備は出てます。生きるために最低限の機能しか残してないというか。うん、ぎりぎりラインを辿ってる感じです」
例えば胃の消化機能とか。味覚とか、嗅覚とか。
そういった、私自身にも感じられる不具合がここ最近増えてきたように思う。
──とくに、記憶関連のことは。
「体力も磨り減っているので、本当は学校生活も渋られてて。だけど、通えなくなる限界までは通うって決めてるんです。だからこうして戻ってきちゃいました」
「な、なんで、そんな無理するのよ。病院で大人しくしていた方が寿命だって……っ」
「そうですねえ」