モノクロに君が咲く
一年前の、春。まだ新学期が始まる前、一年生の入学式の日だった。
いつものように屋上庭園でひとり絵を描いていた俺の前に、突如としてひとりの少女が現れたのは。いや、この場合、舞い降りた──と言った方が適切だろうか。
「こんにちは、春永結生先輩」
風に凪ぐ新月の夜を映したような長い黒髪。陽を知らない真っ白な肌。細い足と華奢な肩。こちらを向く大きな黒曜石の瞳は、子どもが宝物を見つけたときのように嬉しそうで──同時に、この世のなによりも切ない色を灯しているように見えた。
後ろ手を組んで柔らかく微笑む姿に、馬鹿らしくも天使を連想してしまったのはなぜなのか。それほど彼女の存在は、ひどく淡く、儚いものに感じたのかもしれない。
「…………。誰」