モノクロに君が咲く
愁があからさまに嫌そうな顔をしたけれど、まさか断るわけにもいかない。
ゆっくりとカーテンを引き開けた先輩は、私を見てわかりやすく目元を和らげた。
かと思ったら、隣にいる愁へまじまじと視線を移し、
「……中、学生?」
ユイ先輩にしては非常に珍しく、動転した表情で尋ねる。
「っ、中学生で悪かったな!」
「あっこら! 出会い頭に噛みつかないの、愁!」
「……愁?」
私と愁を交互に見比べて、先輩はさらに混乱したような顔をする。
無理もない。高校に中学生がいるだけでも目立つのに、いきなりこんな嫌悪感まるだしな態度を取られたら、誰だって面食らう。
「あの、すみません先輩。この子、私の弟なんです」
「おとうと」
「はい。三つ下の中学二年生で……。今日は私のことを迎えに来てくれたんですよ」
へえ、そう、弟……とぼそりとつぶやき、ユイ先輩は愁を頭の先から足の先まで食い入るように見た。
まるで珍妙な生き物でも見つけたような反応に、私の方が困ってしまう。
というか、ユイ先輩がこんなに他人を意識するのを初めて見たかもしれない。
それから安堵したように胸を撫でおろして「なるほど」とうなずいた。
今の視線でいったいなにに納得したのか気になったが、次の瞬間にはもうユイ先輩の興味はこちらに移っていた。
「体調、どう?」
「あ、え、大丈夫です! なんかぐっすり寝てたみたいで」
「そっか。ならよかった」
先輩がいつになくわかりやすく微笑んだのを見て、私はつい感動を覚える。
「せ、先輩が成長してる……」
そんな私を見て、愁が早くもしびれを切らしたように渋面を向けてきた。