モノクロに君が咲く
耳元で叫んだせいか、愁はビクッと肩を揺らして黙り込んだ。やりきれないように唇を引き結ぶ様子は胸が痛むけれど、今のはあきらかに愁が悪い。
「謝って、愁。そういうのはよくないよ」
「……嫌だ。絶対、謝んない」
「愁……!」
ユイ先輩は険悪な雰囲気に包まれる私と愁を見比べて、すっと目を細めた。
「……君は、俺のことが嫌い、なのかな」
「っ、嫌いだよ! 嫌いに決まってるだろ! おまえが姉ちゃんを取ったんだから!」
「愁っ!」
ふたたび声を荒らげたそのとき。
ドクンッ、と心臓がひどく歪で嫌な音を立てて、強く胸を突いた。
形容しがたい衝撃が走り、全身が大きく揺らいだ。
中心から外側へ、激しく波渡るように感覚が鈍っていく。同時に襲ってきたのは、各所の痺れ。まずい、と思う間もなく、愁の背中から滑り落ちそうになる。
「あ、ぐ……っ」
そんな私をまたもや受け止めてくれたのは、ユイ先輩だった。
「姉ちゃん!?」
「っ、小鳥遊さん?」
息が堰き止められたように詰まり、私は胸を押さえながら喘ぐしかできない。
視界が霞む。意識が混濁して、自分がどこを向いているのかすらわからなくなる。
なにこれ。知らない。こんなの、なったことない。
「ね、姉ちゃ……っ! あ、あんた! 救急車呼んで、早く!」
「救急、車……わかった。小鳥遊さん頑張って、今呼ぶから」
私をふたたびベッドに寝かせた愁に、手を握られたのがわかった。
薄れゆく意識のなか、大粒の涙を溜めて私の名前を呼ぶ、愁の姿が見えた。
その先には、ユイ先輩がいる。
銀が、脳裏に焼きついた。