モノクロに君が咲く

 それはまるで、水のなかから遥か遠くの月を見上げているみたいで。

「──……小鳥遊さん! しっかり……鈴っ……」

 幻聴だろうか。ユイ先輩に、名前を呼ばれたような気がした。

「姉ちゃん、しっかりして。死なないでよ、ねえ、姉ちゃん……!」

 声が次第に遠のいていく。

 ごめんね、とつぶやけたのかどうかも、わからない。

 ──死にたいなんて、思っていない。

 一度も思ったことはない。

 私は、死にたくない。

 本当はもっと、もっと、もっと、生きていたい。

 もうずっと、生きたいと願って、死を受け入れながら、生きてきた。

 けれど、こうして周りの人の心に傷をつけていくのなら、せめてひと思いに死んでしまった方がよいのではないかと、そんな馬鹿げたことを考えたりもする。

 枝を離れた花弁の散り行く先など──。


 枯れた桜の末路など、きっと、はなから決まっているというのに。


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