モノクロに君が咲く



 ピコン、ピコン。

 規則正しく鳴り続ける音に引き寄せられて目が覚めた。深い海の底から浮き上がった意識は、しばらく水面をゆらゆらと揺蕩ってから、ようやく光を浴びる。

「……小鳥遊さん?」

 なによりも先に視界に映りこんだのは、銀。

 ゆっくりと睫毛を伏せて、ふたたび開けてみる。そうして幻覚でないことを確認した私は、ひどく不思議な気持ちで、まだ痺れの後味を引きずる唇を動かす。

「……せん、ぱい?」

「うん。目、覚めたんだ。よかった」

「ここは……」

「病院だよ。君、学校で倒れて救急車で運ばれたの。そこまで時間は経ってないけど」

 病院。倒れた。救急車。
< 71 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop